連帯保証人も消滅時効を援用できる？

連帯保証人とは文字通り「本人（主たる債務者）と連帯して債務を保証している」状態です。したがって皆さんが同じようなものと考えておられる「保証人」と違う点が3つあります

• 本人（主たる債務者）に先に返済を求めることができない（催告の抗弁権がない）

保証人であれば主たる債務者に先に返済を求める事を請求できるのですが、連帯保証人にはそれがありません。したがって債権者が自由に請求できるため、いきなり連帯保証人が請求される場合もあります。それを拒むことができません

• 本人が財産を持っているから、返済できるはずなのでそれで返せない場合だけ返しますとは言えない（検索の抗弁権がない）

催告の抗弁権同様、債権者は請求を自由に選ぶことができるのです。

• 保証人が複数いるからみんなで均等にとは言えない（分別の利益がない）

保証人の場合は、複数人いれば按分するのが普通ですが、連帯保証人は一人ひとりが独立してすべての債務を保証します。そのため全額負担を求められます。 

以上、これだけ書いてもなかなか重い責任を負う形となります。昔の人は「連帯保証人にだけはなったらダメ」といったものです。

連帯保証契約が使われるものは「奨学金」「銀行融資」「部屋の賃貸契約」等があります。

連帯保証契約により連帯保証人は本人（主たる債務者）の借金を保証することになります。（連帯保証債務）この連帯保証債務も消滅時効援用の主張をすることはできます。

最終弁済の時から5年（商事債権）ないし10年（一般的な債務、債務名義がある物等）となります。

連帯保証人は「時効援用によって直接利益を受けるもの」なので主債務の消滅時効援用ができます。主債務が無くなれば「附従性」で連帯保証債務も無くなるため、連帯保証人には時効援用の利益があります。

但し連帯保証人が主債務の消滅時効援用を主張しても、その効力は本人（主たる債務者）には及びません。本人は自分で時効援用をする必要があります。

主債務に更新事由があった場合、連帯保証人にも効力が及びますので、

本人（主たる債務者）が支払いを続けている限りは、連帯保証人は時効援用をすることはできません！！

時効の更新事由は少しややこしいので下記に表を記載します。

但し、主債務者が一部弁済を行った場合は、時効期間が経過した後かどうかで変わります

• 連帯保証人が複数の場合の場合では、個別に時効期間はカウントされるので個別に時効援用ができます。したがって、一人が支払いを続けていても、別の一人が支払っていなければ消滅時効の援用の主張はできます
• 上記の場合で本人が支払っていない場合は本人も主債務の時効を主張することができます。さらに連帯保証人も主債務の時効は主張できます。このため「附従性」で連帯保証債務も無くなります。連帯保証債務は支払続けていた為、時効主張はできませんが、時効援用により主債務が消滅するため、連帯保証債務も消滅します。
• 連帯保証人が亡くなった場合は連帯保証債務も相続の対象となります。したがって何もしなければ（単純承認）相続人はその連帯保証債務を相続するため、支払い義務が発生します。そのため相続放棄等の検討が必要です。但し、相続放棄をするとすべての財産（当然プラスも含まれる）を相続しないこととなりますので検討が必要となります。
• 主債務者が自己破産した場合は、連帯保証債務は無くなりません。破産手続は「支払いが免除」になっただけで、債務が消滅したわけではないからです。その場合の時効期間は管財事件（財産が多い場合や複雑な案件）であれば時効が更新され、期間も10年となります。同時廃止（簡易な手続き）であれば時効は更新されず、時効期間も破産手続き前から引き継がれます。

いかがでしたでしょうか。

連帯保証人と時効の関係は非常にややこしく、わかりにくい部分があります。しかし、連帯保証人が独自に時効を援用して債務を消滅させることができます。一度専門家に相談することをお勧めします。